どぶ川にかかる橋 ~ 2杯目ドライマティーニ

85%の真実に

15%の嘘を混ぜて書いてる、

どどさんとダーリンのなれそめ小説。

前回までのお話

どぶ川にかかる橋 ~ 1杯目ジントニック

 

文中に出てくるマナトさんと、

朝夏まなと様は全く無関係です。

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「忘れられてるかもな。」

 

マナトさんの店に行ったのは、

ツヨシと一緒に行ってから1週間後の事だった。

難波で買い物があって、というのはただの口実で、

マナトさんに会いたいという気持ちと、

ただ酒が飲みたいという気持ちが半々。

 

マナトさんは、どどさんの事を完全に忘れていた。

まあ、そうだよね。

気を取り直し、

「あ、あの・・・先日ツヨシさんと一緒に来たどどです」

 

「ああ、ツヨシと一緒に来た子か・・・」

思い出したマナトさんと、

ちょこっと会話をして、

お酒を3杯位飲んで帰った。

 

別に家から近いわけでもなく、

電車で行くため、

そんなに頻繁に行くのはどうかと思い、

週1回ほどのペースで、

通っていた。

 

正直、家に帰っても何もすることが無いので、

毎日でも行けたのだけど、

マナトさんに、変な女だと思われたくなかったので、

自制して、週一回にしていたのだ。

 

いろんなお酒も教えて貰い、

いろいろと飲めるようになってきたのが楽しくて、

酒飲みの最終地点はバーだなと思うようになってきた。

 

マナトさんは、相変わらず素敵だし、かっこいいけど、

カウンターの中の人とお客という関係が、

一番良いんだなと思ってた。

 

別に隠しているわけでもないので、

当時結婚していた、旦那も連れて行ったりした。

 

旦那は、特にお酒が好きでもないけど、

良い酒の味は知っていて、

普段頼まないような高い酒を頼んだり、

どどが飲んだ事がないカクテルを

注文するような男だった。

 

ある日、一緒にマナトさんのお店に行ったときに、

旦那がドライマティーニを注文したのだ。

 

普通のマティーニではなく、ドライマティーニ。

ここのこだわりは、良くわからなかったけど、

元旦那がドライマティーニが好きなんだなと、

深く考えもせずに注文し、

やってきたおしゃれなカクテルを旦那が飲んだ。

 

「おおおおお!美味しい!!」

 

あまり褒めない旦那が感動していたので、

私も飲んでみることに。

 

それは、嘘みたいに美味しかった。

 

どどはお酒が大好きなので、

今までいろんなお酒を飲んで来たのだが、

カクテルというものだけは、

どうも好きになれなかった。

 

いわゆるロングカクテルといわれる、

氷の入ったグラスで提供されるものは良いとして、

ショートカクテルと呼ばれる、

足のついたカクテルグラスで出されるもので、

美味しいものを飲んだ事が無かったのだ。

 

しかし、マナトさんのドライマティーニは違った。

せっかくのお酒をダメにすると思ってたショートカクテルだけど、

それぞれの良さを引きだし、高めるような、

そんな味のするカクテルだった。

 

長い年月、いろいろ飲んできて、

カクテルの意味が分かった瞬間でもあった。

 

そして、マナトさんがただのイケメンではなく、

真のバーテンダーなんだと確信した瞬間でもあった。

 

もう、マナトさんへの気持ちは尊敬の念に変わりつつあり、

この先、ずっと、バーテンダーと客の関係を続けていこうと思っていた。

 

こんなに酒の好みをわかってくれて、

こんなにおいしいカクテル作れる人は、

大切にしなければ。

 

これからの人生でまた出会えるかどうか、わからない。

そんな人に思えた。

 

その後、マナトさんのドライマティーニへの、

並々ならぬこだわりについて、

話をして貰った時があった。

 

自分が求める味を探して、

色んなお店を訪ねた話とか、

何度も練習して、今の味を作った話とか。

本当にマナトさんは職人なんだと思った。

 

そんな事がきっかけで、

マナトさんとは、色んな話をするようになった。

私の不幸な結婚生活についても、

愚痴を聞いてくれるようになっていった。

 

時にはマナトさんの私生活についても、

話すようになり、

色々と知るようになった。

でも、嫁の話は正直聞かなくても良かった。

結局、マナトさんと一緒に住んでるのは、

嫁なんだし、

ちょっと悪口を言っても、

所詮嫁なんだし。

 

マナトさんの嫁も交えて店が終わってから、

居酒屋に行ったこともあった。

 

初対面で感じた、嫁へのジェラシーは、

相変わらず持ってたけど、

そんな事はどうにもならない事だし、

忘れている方が、良いことなんだろうなと、

思っていた。

 

ただ、色々と話している中で、

どどさんが感じてしまったのは、

マナトさんの孤独感。

 

会話のどこかに、

その孤独がいつもあるのだ。

 

まあ、普通の結婚生活に思えるけど、

なんでこんなに孤独なんだろうか?

その答えが知りたいと、

なんとなく思った。

 

マナトさんの孤独は、

私が闇から脱出する鍵のひとつだったかも知れない。

 

マナトさんと仲良くなり、

お店のイベントにも誘われて、

一緒に花見とかにも行った。

お店の常連さんとも仲良しになり、

自然と、週一回行ってたバーへは、

いつしか週二回行くようになっていた。

 

道頓堀にかかる小さな橋を渡る手前から、

マナトさんのお店の看板を眺めて、

エレベーターで4階に行く。

どどにとって嬉しい瞬間だった。

 

なんとなく、マナトさんも楽しみにしてくれているような?

たぶん、勘違いだとは思うけど。

とにかく、マナトさんのお酒を飲んでると、

不幸な結婚生活を忘れられて、

なによりも楽しかった。

 

そんなある日、事件は起こった。

マナトさんが倒れたのだ。

 

倒れた日の最後の客は、どどだった。

 

別に何の変りもなかったけど、

いつも話さないような事を、

ポツリポツリと話してたマナトさん。

長年、家に居たお姉さんが、

ようやく結婚したという話だったと思う。

 

色々あったけど、良かったなという話だった。

嫁以外の家族の話を聞いたのは、

初めてだったかも知れない。

 

遅い時間で、ほかに客が居なくなると、

隣に座ってしゃべったりすることがあって、

その日もそんな感じで、

カウンターの横の席に座って、

話していた。

時々、遠い目をするマナトさんに、

「なんでそんなに孤独感を持ってるの?」

って聞いたと思う。

マナトさんは、

「そうかな?」

って言ってちょっと笑った。

でも、その後に、

「俺は昔から、自分を解ってくれる人が居なかった」

と、言いだした時には、

見ては行けない部屋の扉を開いた様な、

でも、ちょっと嬉しいような、

複雑な気持ちになったのを覚えている。

 

いつもは、そんなに酔わないのに、

マナトさんが普段話さないような話を、

たくさん話してくれたから、

お酒をたくさんおかわりしちゃって、

すっかり酔っぱらってしまった。

 

さんざん飲んだけど、

やっぱりドライマティーニが飲みたくて、

でも、さすがにドライマティーニは堪えたので、

チビチビと、お水を飲みながら飲みきった事は覚えてる。

 

その後も、何だか帰りたくなくて、

バーボンを頼んだ。

いつになく、マナトさんは人懐こくて、

このまま、ずーっと話して居たかったけど、

既に泥酔一歩手前のどどは、

タクシーで家路についたのだった。

 

やっぱり、マナトさんが好きだな。

 

と、確認したところで、マナトさんが倒れたのだ。

 

マナトさんが入院している病院を教えて貰って、

病室に見舞いに行くと、

ベットに横たわるマナトさんが居た。

 

脳内出血による、半身まひ状態のマナトさんを、

病院のベットに残したまま、

どこかに行って居ない嫁。

どういう訳だか、本能の声が聞こえた。

(わたしが側に居てあげよう)

 

いつも孤独な気持ちを抱えてたマナトさんが、

今、まさに孤独な状態で居る。

 

私は登る、

なぜならそこに山があるから。

 

そんな心境のどどさんだった。

 

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自分の思い出を小説風に書くの楽しいねえ。(笑)

しかも、マナトさんだよ?

なんでもやり放題だね(笑)

 

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