第2話 流れのゆくえ ~ 1番目の橋

好評だったダーリンとのなれそめ、小説風アレンジ。

自分で言うのもなんだけど、

結構、ドラマティックに生きてたのねえ。

渦中に居る時は解らないものです。

 

ダーリンとの出会いからプロポーズまでのまとめ

 

第2話はプロポーズをされてから、

離婚するまでの話です。

ここは、色んなドラマがあったんですよ。

なんせ小説風ですから、やり放題ですね。

 

今回もダーリンは勿論「マナトさん」で行くから!

そこんとこ、ヨロシク!(笑)

 

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電話を切ると、

そうすることが決まっていたように、

家を飛び出した。

向かった先は、

家の近くのコンビニエンスストア。

 

どどは、そこでレターセットを買ったのだ。

 

電話の相手は、

友達に紹介してもらった、

霊能者の方。

手紙を書く相手は別居中の旦那。

 

しかし、別居中と思ってるのはどどだけで、

旦那は単身赴任してると思ってる。

 

一度、別居したら、もう一緒には住みたくない。

というよりも、もう無理だ。

 

長年、バケツに少しづつ溜めて来た我慢が、

別居というきっかけで、

一気に溢れだしたのだ。

 

マナトさんのお見舞いで、

癒して貰っていたのは、むしろどどの方だ。

マナトさんは、入院生活という制約の中で、

一生懸命リハビリに勤しみ、

そして、自分の未来を見据えていた。

そんな中で、どどを癒してくれてたのだ。

 

でも、マナトさんの退院の日が近づいてきている。

この時間は、もうすぐ終わる。

そんな気がしたどどは、

何か行動しなくちゃ!

と、焦っていた。

 

マナトさんとの毎日は、

どどに生きる希望を与えてくれた。

 

マナトさんは、偽りの自分を脱ぎ捨て、

新たに生き直して居るように見えた。

どども生きよう!

もう一度自分らしく!

 

しかし、焦ったところで、

7年間の結婚生活を続けてる旦那と、

どうやって別れたら良いのか?

さっぱり見当がつかなかった。

 

霊能者の方は、以前引越しする時に、

縁起の良い方角を教えて貰った縁で、

知っていたのだが、

急に離婚について相談しても、

何も手がかりが無いかも知れない。

しかし、どどには、

他に相談する相手が居なかったのだ。

 

友人が離婚したい、と言って来たら、

「もう一度、良く考えてみたら?」

と、言うのが世間一般では、

デフォルトの回答なのだろうか?

 

誰に相談しても同じことを言われた。

良く考えて・・・

良く考えて・・・

自分なりに決めた事なのに。

 

離婚したい!

服買いたい!

が、同じ位のテンションで、

愚痴ってる人が世の中に多いのかも知れない。

 

でも少なくとも、どどは違う。

「離婚」という単語は、

NGワードに思えたし、

軽々しく口にしてはダメな事だと思っていた。

色々考えて、考え抜いて、

この生活を続けるのは無理だと思ったのだ。

 

理由は、色々な事の積み重ねだけど、

一番わかり易くて、

説明しやすいのは、

旦那がEDで、妊娠が望める環境に無い事。

どどの夢は、妊娠と出産と育児だったので、

その夢をあきらめることが出来なかったのだ。

 

そして、何かを諦めた代償に、

特別なご褒美も無かった。

どどよりも、自分の遊びに夢中な旦那。

一人ぼっちで家に居ても、

なにもする事が無い。

どんどん無気力になっていき、

次第に心が死んで行った。

 

しかしながら、この時37歳。

もう、妊娠出来る時間は無くなろうとしていた。

妊娠は出来ないけど、

夢を叶える努力をしない、

心が死んでいってる嫁に気がつくことが無い男。

そんな男と、この先の未来を描くことが

出来なかったのだ。

 

離婚する事は決めているのだが、

何から始めて良いのか解らないので、

まず、何から、どこから手を付けるのか、

それを一般常識的に教えて貰いたかっただけだ。

 

いつだって、自分の人生は、

自分で決めて来た。

だけど、「離婚」という大きな壁の前に立ち、

何から攻略したら良いのか、

それが解らなかったのだ。

 

冷静になった今、普通に、

まず、その意思を伝えてみたら?

と、アドバイス出来る。

 

でも、初めて見る「離婚」という大きな壁が、

壊したら良いのか、

登ったら良いのか、

回り道したら良いのか、

さっぱり解らなかったのである。

 

ただ、「離婚」の壁を眺めて居るどどが居た。

そして驚くことに、

既に5年はその状態を続けて居たのだ。

 

みれば見る程、「離婚」の壁は分厚くて大きくて、

とても突破できそうにない物に思えて来ていた。

なんせ、心が死んでいるのである。

無気力の塊は、生物的には生きてるが、

人間的には死んでいる。

 

しかし、マナトさんという存在が出来た事で、

このままでは駄目だ。

何か始めなくちゃ。

もう一度、生きようと思ったのだ。

焦って考えた結果が霊能者さんへ

電話相談する事だったのだ。

 

「手紙を書いてみたら?」

 

霊能者さんの提案は、シンプルだったけど、

どぶ川に漂うどどの心に

光を照らしてくれた様に感じた。

 

 

コンビニには、シンプルな無地の便箋と

封筒が売っていた。

迷わずそれを選び、

家に戻ると、早速書き始めた。

驚くことに、スラスラと書けたのだ。

一旦、読み返し、

もっと違う事も書こう。

更に読み返し、書き足す。

 

およそ5日間かけて完成した、

旦那への別れの手紙は、

最後、

「そんな訳で、お世話になりました。

離婚してください。」

と結んだ事に、自分でも驚いたけど、

書き切った時のスッキリした気持ちは

今でも覚えている。

 

便箋を折りたたみ、封筒へ入れる。

切手を貼り、ポストへ向かった。

 

ポストにその手紙を投函し、

「コトッ」

という音がした時に、

どどの中の何かがはじけた。

 

凄く嬉しかった。

ようやく、一歩踏み出せたことに。

 

マナトさんに報告しよう。

 

見舞いに行き、手紙を出した事を伝えると、

マナトさんは、

「俺も、頑張らないとな・・・」

と、ちょっと遠い目をしていた。

 

どどと、マナトさんは、

お互い離婚したい者同士、

励まし合う関係だった。

その先のマナトさんとの生活とか、

マナトさんとの付き合いとか、

そんな事とは関係なく、

離婚相談仲間という面を持っていた。

 

お互い、離婚する事と、

二人が付き合ったり、

再婚したりする事は、

全く別の問題ととらえて居たのだ。

 

つまり、マナトさんが居るから

離婚したい訳では無く、

とりあえず、離婚したい。

そして、運が良ければ、

マナトさんと付き合いたい。

そういう流れなのだ。

それは、マナトさんも同じで、

不思議なくらい、そこは一致していた。

 

どうやら、近々嫁が見舞いに来るらしい。

特別、何かがある時以外は、

来なくても大丈夫だよ、と言ってる様だったが、

マナトさんが呼んだみたいだった。

 

マナトさんは、益々良くなっていて、

大分遠くまで歩ける様になっていた。

 

駅前のスーパーまで一緒に出掛けたり、

病院の周りをグルっと歩いたり。

季節は春になろうとしていた。

 

病院から駅へ行く途中にある公演は、

桜の木が沢山植えられていて、

開花の季節が近づくと、提灯を付けて、

お花見の準備をしていた。

 

「次の休みの日位には、桜が咲くかも。

公園に行ってみない?」

「花見か・・・そういえば去年は大阪城公園に行ったね」

「天満橋の駅で待ち合わせしたね」

笑顔で笑い合ったけど、

去年は、元気だったマナトさんを思い出し、

ちょっと悲しくなった。

なんで、こんな事になっちゃったんだろう。

でも、おかげでマナトさんと仲良くなれたんだけど。

 

一緒に花見に行く日になり、

病院のナースステーションに、

マナトさんが声をかけると、

「ああ、奥様と一緒に行くんですね」

と。

奥様。

奥様じゃないけど、

奥様より見舞いに来てるから、

仕方ない。

 

「ねえ、奥様とか言われちゃったけど、大丈夫?」

「今更説明が面倒だし、良いよ。

あいつは、昨日来たんだけどね。」

 

花見会場は、近くに住んでる人達でいっぱいだった。

シートを敷いて、宴会してるグループもあり、

なかなか盛況だった。

少しだけど屋台も出て居て、

タコ焼きとコーラを買って、

空いてるベンチに腰かけると、

マナトさんが、話し始めた。

 

「昨日、あいつ来たんだよ。

でな、退院の話も出始めてるから、

今後、どうする?

って話になったんだ。

あいつは、仕事があるから、

面倒見れないし、

もう少し回復するまで、

実家に帰っててくれ。

って言うから、

それなら、もう別れよう。

って言ったんだ。

金銭的には援助したいから、

と、言われたけど。

そういうのは、何か違うと思うから。」

 

マナトさんの男気は、

別れる嫁に対しても発揮されるのか。

嫁に苦労かけたくないから別れるのかな?

って思った。

 

嫁はマナトさんへ未練がある様だったけど、

マナトさんは、

障がい者になった旦那を捨てたら世間体が悪い。

でも、そんな旦那とは別れた方が良い。

そんな気持ちなのでは?と・・・

 

障がい者。

 

マナトさんから、その言葉を聞いたのは、

この時が初めてだったかも知れない。

 

まあ、確かにそうだけど、

それが一体何の、

問題あるのだろうか?

 

座って話しているだけなら、

元気な頃と何も変わらない、

そんなマナトさんの、どこが障がい者なんだろうか?

 

何も障がいがないと思われている、

どどの旦那の方が、

よっぽど、何か障がい者なんじゃないか?

とすら思えてきたし、

マナトさんの嫁も、

所詮、カッコつけたいだけで、

マナトさんのどこが好きだったんだろう?

って思ってた。

 

それとも、そんな能天気な考え方をしてるのは、

どどだけなのかな?とも。

 

満開の桜の木の下で、

来年もマナトさんと花見が出来たら

良いなあって考えていた。

そしてその頃、お互いスッキリと

離婚出来てたら良いなあ。

ゆっくり桜を眺めて居たかったけど、

そろそろ病院に戻らないと。

 

どどが出した手紙の返事は来なかった。

メールで(手紙届いた?)って確かめたら、

(届いたよ)と返信きたけど。

 

これは、千葉に行くしかないのかも知れないな。

 

しかし、どどはもう会いたくないのだ。

旦那なんか会いたくない。

でも会わないと何も変わらない。

 

だって、もう時間は動き始めているのだ。

 

病院へ戻る時に、マナトさんと一緒に、

どぶ川の橋を渡った。

明るい時間に見た川は、ちゃんと流れていた。

上流から下流に向かって。

 

どんなに足掻いても、

川は上流から下流に流れるのだ。

どども、離婚するって決めたんだから、

絶対に離婚しよう。

この流れに身をまかせて。

 

流れ着いた先には何があるのか?

もう、そんな事はどうでもいい。

とりあえず、流れに身を任せる。

その方が上手くいく事もあるはずだから。

 

どぶ川にドッポンと飛び込んで、

流されていく。

運命に流され始めたどどだった。

そして、もう一度生き始めたのだ。

 

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マナトさんと朝夏まなとさんは、

全く無関係です。

(自分への確認・リプライズ)

 

 

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