好評だったダーリンとのなれそめ小説。
ダーリンとの出会いからプロポーズまでのまとめ
第2話はプロポーズをされてから、
離婚するまでの話です。
前回までのお話し
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千葉から戻ったどどを待っていたのは、
嬉しいニュースだった
マナトさんの退院が決まったのだ。
「やっと退院出来るよ」
良かったね!と喜んだけど、
マナトさんがちょっと遠くなりそうで、
少し寂しかった。
「退院したら、実家に帰るって、
おかんにも、話したから。」
嫁との生活に戻らない事は、
少し良かったなと思ったけど。
暫く考えてから、聞いてみた。
「退院しても、会えるかな?」
「うん、会えるよ。
あんまり遠出とかは、まだ無理だけど、
リハビリしなくちゃな!
電車に乗ったり」
嘘かもしれないけど、
未来の話をしてくれるマナトさんが、
心底有難かった。
なんせ、どどの未来は闇の中だった。
ちょっと先の未来の楽しい予定を考える事で、
どんより広がる闇の存在を、
ひと時忘れる。
まるで2時間しか効かない頭痛薬みたいな話だ。
でも、そんな気休めの様な小さな幸せが、
今は嬉しかった。
千葉から帰ってきてから、
1週間経っても旦那からの返事は無かった。
区役所で貰ってきた離婚届にサインし、
また手紙を書いて、投函した。
(私は本当に離婚したいの。
先日の手紙の内容がすべてです。
離婚届を送るので、出して貰って良いですし、
サインして送りかえして貰っても良いです)
攻撃は最大の防御だ。
とは、誰が言った言葉なんだろうか?
とにかく、攻撃し続ける。
行動し続ける。
何かしてないと、また立ちはだかる壁の前に、
立ち尽くす日々へ逆戻りしそうだ。
空回りしてる自分に苦笑しながらも、
行動し続ける事で気を紛らわせていた。
もうすぐ、マナトさんに毎日会えなくなる。
そんな焦りが、更にどどを加速させて行った。
解っていたけど、退院日には、
見舞いに来ないで欲しいと言われた。
嫁が来るから。
うん。そうだよね。
別に悪い事は何もしてないけど、
すっかり日陰の女の気分になるのは、
どどの気持ちがそうさせているからに、
他ならない。
メールだけ送った。
(長い間、入院お疲れ様でした。
毎日、会えて楽しかったし、
色々、相談に乗って貰えて嬉しかった。
これからも、会えますように。
そして、約束したデート、実現しようね!)
メールの最後に笑顔のマークを入れたけど、
本当は、泣いていた。
何もかも上手く行かない、
そんな気分になってしまう時。
いつも、一人ぼっちで泣いていた。
離婚の壁の前に居るのに、
全く、壁の存在に気が付かず、
いや、見ないふりをしていて、
だけど、何も上手くいかず、
一人で泣いていた日々。
あの頃は、本当に一人だった。
世界に自分だけしか居ない気がした。
でも、今は勘違いかも知れないけど、
マナトさんが居てくれる。
もっと、信じようと思った。
マナトさんを信じようと思った。
旦那を信じて結婚したけど、
裏切られつづけ、
すっかり人間不信になっていたのかも知れない。
でも、もう一度信じよう。
そんな風に思った。
マナトさんは退院した。
ちょっとした着替えなどを、
嫁に持ってきてもらい、
実家で生活を始める様だ。
そして、初めてデートする事になった。
デートというか、ただ喫茶店に行くだけなんだけど。
待ちあわせ場所に居ると、
マナトさんが遠くから来るのが見えて、
ホッとした。
マナトさんは、自分で歩ける様になったとはいえ、
健常人の様に早く歩くのは難しく、
人の波の中をゆっくりとかき分け、
近づいてくる様は、
大型客船が港に寄港するような雰囲気だった。
どどは、マナトさんの港になりたい。
そう思ったけど。
なんせ、まずは寄港中の船を追いやらなくては。
何も始まらない。
マナトさんと、一緒に喫茶店に入り、
カフェラテを注文した。
マナトさんはポケットから、
ジュークボックス型のおもちゃを取り出すと、
「これ、やるわ」
パカっと開けると、音が出るおもちゃ。
昔、ジュークボックスのあるライブハウスで働いていた事があるマナトさん。
そんな昔の事は勿論知らないけど、
何となく、昔の事も知ってて欲しいという心意気に感じ、
嬉しかった。
「あのな、今度、運送屋さんにお願いして、
住んでた家から荷物出す事にしたんだ。
ホントは、荷造り出来たら良いんだけど、
身体が悪いから、一人では無理なんだよね。
んで、そういうのも含めてお願いしたから。」
長い入院生活で、ゆっくり生活してたからか、
人ごみの中で行動するのは、
かなり疲労するようで、
マナトさんは、早めに家に帰る事にした。
「また、会おうね。」
って言ったら、
「お前、毎日会ってたから、会えないと寂しいの?」
って笑って聞かれたけど、
真顔で頷いたどどだった。
マナトさんの行動力には、頭が下がる。
今、何もしてなくて暇だから。
と、言っても、退院してすぐなのに、
こんなに色々と、
やる気を出して進めているのが素晴らしい。
見習わないと。
荷物を出す日は、嫁が仕事で居ない日らしい。
留守の間に部屋へ行き、
荷物を出して、実家に戻るという事の様だ。
手伝ってあげたいのは、やまやまだけど、
ここは、どどの出る幕ではない。
引越し当日、マナトさんは、
部屋の鍵と一緒に離婚届を郵便受けに入れて、
運送屋さんと一緒に実家へ向かったそうだ。
マナトさんの長期に及ぶ入院生活で、
自分でかけていた入院保険料は、
全て嫁に託し、マナトさんはお金を要求する事も無く、
スッキリ別れた。
勿論、入院費はそこから払って貰った様だけど。
マナトさんの嫁は、障がい者になった旦那から、
解放されたと思ったのか?
そして、自分に気持ちが無い事が解って、
身を引いたのだろうか?
その両方のような気もするが、
確かに、自分に気持ちの無い男と、
一緒に暮らすのは辛い。
その部分では嫁にとても共感できた。
しかし、どうしてもマナトさんを「捨てた」ように思えて、
なんとも言えない悔しさを感じていた。
そして、旦那からは、何も返事が来なかった。
メールもした。
(手紙届いてる?)
暫くしてから返事が来た。
(届いてます。)
ですます調になった事を確認し、
ようやく、これがただの狂言ではない事を理解したようだ。
本当の勝負はこれからだと思った。
旦那もようやくどぶ川に飛び込んだのだ。
あとは、流れて来い。
流されて来い。
どどが居る、深くて広い川まで。
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離婚も結婚も恋愛も、
自分だけの力では何もできない。
相手あっての事だから。
相手を動かすのは、
自分の信念以外の何ものでも無い。
自分を信じる力が、常に推進力となり、
川の流れとの相乗効果で、どんどん流れて行ったのです。

どどの人生の河辺に佇む朝夏まなと様のイメージ画像。
文中の「マナトさん」とは、何の関係もございません。
(自分への確認、通常運転)
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