好評だったダーリンとのなれそめ小説。
ダーリンとの出会いからプロポーズまでのまとめ
第2話はプロポーズをされてから、
離婚するまでの話です。
前回までの話。
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季節は秋になっていた。
空は高く、夜になると涼しい風が吹いてきた。
ちょっと寒くなってきたから、
マナトさん大丈夫かな?
待ち合わせの場所に行くと、
ベンチに座ってるマナトさんが居た。
前に立って、
今日会った事を、
何から喋って良いのか解らず、
思いつくままに、ぶちまけた。
最後に、
ウィークリーマンションから、
前の部屋を見て、
決意した事、
(あの部屋よりもいい部屋に住む事
旦那よりも金持ちになる事)
を、マナトさんに伝えた時は、
なぜか涙が出てきた。
勝ち負けじゃないのは解ってる。
でも、私は旦那に勝ちたいのだ。
なぜ勝ちたいのか?
無理難題を突きつけて、
傍若無人な言動で傷つけられたからだ。
見返してやりたい。
旦那がショックを受ける位に。
どどは傷ついていた。
旦那にされた嫌がらせよりも、
旦那に言わなければいけなかった、
暴言の数々に。
自分の気持ちと、
言わなければいけない言葉のギャップが大きくて、
それを受け入れられなかったのだ。
自分が意を決して放つ暴言を聞いた時の、
旦那の表情が、いつまでも心に刺さる。
旦那への優しさなどでは無い。
良心の呵責。
そんな簡単なものでも無く、
ただただ、どどを苦しめた。
その苦しみから解放される為に、
旦那に勝ちたいと願ってる。
そんな自分にも、ほとほと疲れ果てていた。
マナトさんは荒野を一緒に歩いてくれているようでもあり、
荒野を歩いているどどを、
遠くから見守ってるようでもあった。
人の苦しみを理解しようとするような、
気安い傲慢さを持ち合わせないマナトさんは、
ただ、どどの話を聞いてくれた。
善悪を判定するのではなく、
ただ話を聞くマナトさん。
ヘタに加担されない事で、
ニュートラルなポジションに戻ろうと、
気持ちが向くのだが、
なにせ消化不良な出来事だった。
勝とうとしても、
何も解決しない。
でも、今は最大の敵として見た方が、
気持ちは落ち着く。
そんな気がした。
マナトさんは私の決意には賛同せず、
晴れて離婚出来たら、
一緒に暮らそうね。
とだけ、言ってくれた。
そして、
「俺は当事者ではないから、
今までのどどちゃんと旦那の関係も知らんやんか。
どどちゃんからの話しか聞けへんから、
こうしたら良いとか、
この方が良いとか、
そんな無責任な事は言われへん。」
こんな時も、男前なのか?
マナトさんの男前は、
時々TPOをわきまえないので、
本当に、古い人間だと思うし、
こういうのが、本当の「男気」なんだと思った。
俺は関係ないし、知らないって言いながらも、
しっかりと気持ちを抱きしめてくれてる。
その温もりは、とても気持ちが良く、
有難かった。
ウィークリーマンションは、
約2週間住んだ。
その間に、物件を探し歩いていた。
マナトさんにも付き合ってもらって、
不動産屋さんに案内してもらってると、
まるで新婚のカップルみたいで楽しかった。
超エンパス体質のマナトさんは、
霊感もあり、
そのせいで、引越し先がなかなか決まらないという、
面白い事になっていた。
凄く良いマンションでも、
「俺はここには住めないな、ここが暗いんだよ。」
まあ、そんな事を言われたら、
次の物件を観に行こうって思ってしまう。
ようやく決まったマンションは、
結構古いマンションだったけど、
一人暮らしには広めで住みやすかった。
テレビは旦那にあげたので、
とりあえず、テレビとテレビ台は買わないと。
以前から欲しかった家具屋さんのテレビ台を、
マナトさんと一緒に観に行って、買う事にした。
マナトさんは、自転車も普通に乗れるし、
サクサク歩けないだけで、なんの問題も無かった。
テレビ台は少し高かったけど、
これからは、気に入ったものだけに囲まれて暮らして行こうと思ったので、
その始まりの記念になると思って買ったのだ。
部屋にテレビ台が到着すると、
やっぱりとても良い。
「良い買い物したわ」
と、喜ぶどどに、マナトさんが笑いかけていた。
ユウリに預けていた観葉植物は、
突然の環境の変化で、
大分枯れてしまったが、
また、生えてくると思い、
部屋に置いた。
一度死んで、また再生する。
まるで、どどみたいだ。
引越が落ち着いた頃、
マナトさんは、意を決したように言った。
「俺な、店しようと思うんだ。」
理由としては、
左手があまり動かないので、
トレンチを持って働くのは無理だ。
一人でカウンターだけで出来る店なら、
なんとかなる。
でも、こんな障がい者は雇って貰えない。
自分で店を始めるしか無い。
もう一度、マナトさんのドライマティーニが飲めるのか!
それは嬉しい。
マナトさんは物件探し、そして開店準備の為に、
色んな物を買い集め始めた。
アメリカ雑貨が大好きなマナトさんなので、
必然的に雑貨屋めぐりが日課になった。
ちょっと遠出もして、
神戸や京都まで行った事もあった。
マナトさんのお店は、
12月に開店を目指す事になった。
どどもその頃には、別れたい。
年内に離婚したい。
別れると決めた旦那だったが、
その後の動きが全く無く、
どどは2通目の離婚届を郵送した。
旦那の答えは、
「財産分与をしないと!」
結婚してから貯めたお金などをすべて折半するという。
その為に、預金通帳のコピーを送ってくれと言ってきた。
ここで長引いても、どどには何のメリットも無かったので、
正直に全部の通帳のコピーを送った。
もう、金なんか要らないのだ。
どどは、自分の幸せを得るための代償に、
全てを失っても良いと思っていた。
「私は、お金は要らないから、
貴方の好きな様に分けて!
それについての明細も要りません。
それよりも早く別れたいから。」
この言葉は旦那にとって、
最後の砦だった「金」を、
完全否定された訳で、
ご愁傷様としか言い様がない。
男として拒否され、
金も要らないと言われた、
何の魅力も無い男。
マナトさんのお店は着々と準備が進み、
12月に開店出来る事になった。
開店の手伝いもちょこっとして、
久しぶりにマナトさんのカクテルを飲んだ。
本当に良かったなと思った。
毎晩、お店に顔を出して、
マナトさんと毎日話してた。
ある日、店に行くと、
マナトさんの元嫁が来ていた。
やっぱりマナトさんに未練があるんだろうな。
女の直感で、感じた。
カウンターの椅子に酔っぱらって座る元嫁は、
寂しそうだった。
元嫁もまた、女の直感で、
どどとマナトさんの事を把握したようだった。
「おまえ、飲みすぎやで。今日はもう帰り。」
マナトさんに帰宅を促されると、
「うん。じゃあまた来るね」
と帰って行った。
店のお客なので、私がとやかく言える立場では無い。
ここはマナトさんの店で、
元嫁は客。
どどだって、ただの客。
「アキラの店で聞いて来たって言ってた」
元嫁がどんな経路で、
この店に辿り着いたのかなんて、
別に知りたくなかったけど、
マナトさんの誠意だと感じて嬉しかった。
アキラというのは、
マナトさんと、以前一緒に働いていた人で、
マナトさんのお店の近くの店で働いていた。
そこの店に顔を出した元嫁が、
今、マナトさんは何してるか?
と、聞いたのか、
アキラから話したのかは解らないが、
こうやって、店で鉢合わせするのは気分が悪い。
いつまでたっても、
「マナトさんを捨てた女」だからだ。
一方、どどの離婚は何も進展して無かった。
ゴールが解らない荒野を、ただ淡々と歩いていた。
旦那は、財産分与の計算をしているとかで、
いつまでたっても連絡が来なかった。
理系の学部に居た旦那。
数学は得意なのかもしれないけど、
算数は苦手なのかしら?
時々、事務的にメールした。
「まだですか?」
「いつなら離婚してくれますか?」
「早くしてください。」
完全にルーチンワーク。
しかし、ここで辞めるわけには行かない。
例え方向が間違っていても、
歩き続ける、
進み続ける事が大切なのだ。
ようやく財産分与の計算が終わり、
その明細書が届いたのは、
年が明けてからの事だった。
財産の分け方は、
旦那が4で、どどが6という割合だった。
ウィークリーマンションや、
今のマンションに引っ越した費用も含まれていたのは、
有難かった。
今以上にお金を取られる事にはならなかったけど、
どどが貰えるお金は少なかった。
多分、300万円位は軽く損してると思う。
でも、全然損失と思わなかった。
こんな運気の下がる男とお別れできるなら、
その方が絶対に良い。
「では、いつ離婚しますか?
私が千葉の貴方の住んでる所の役所に出向きますから、
そこで離婚しましょう。
いつ会社を休めますか?」
旦那が指定して来た日は、
そこから更に2週間後ではあったが、
荒野の先に、荒野では無い何かが見えて来たように思えた。
マナトさん、どどはようやく離婚出来るよ。
今まで側に居てくれてありがとう。
本当に良かった。
荒野の先に見えるものは、
まだハッキリとは解らなかったけど、
マナトさんと一緒に住む家だと良いなあと思った。
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ねえ、
まだ離婚してないわよ!
どどさん!!
これ、いつまで続くのかしらね??

マナトさんと朝夏まなと様は、
全く無関係です。
(確認大切)
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