好評だったダーリンとのなれそめ小説。
ダーリンとの出会いからプロポーズまでのまとめ
第2話はプロポーズをされてから、
離婚するまでの話です。
ここは長いですので、テキトーに読むのが良いでしょう。
前回までの話。
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「じゃあ、離婚してきますね。」
マナトさんにそう告げると、
満面の笑顔で、
「よし!行って来い!」
と送り出してくれた。
とりあえず、実家に寄った。
今日離婚届けを出す事を、報告したら、
父が、引き出しから一通の手紙を出した。
義父から父に手紙が届いて居たのだ。
「呑気な息子が三行半を突きつけられた、といった形です。」
といった文から始まっていた。
義父は解ってたんだ。
息子の不甲斐なさを。
それでも息子は息子だ。
息子を全否定するわけでも無く、
かといって、こちらを批判する訳でも無い。
別々の道を歩むことになりますが、
お世話になりました。
と、結んであった。
義父は、昭和の高度急成長時代を支えた、
スーパーサラリーマン。
こういう手紙の中からも、
お人柄がにじみ出る。
義父のこういう見えない努力や、
人間力には気が付かず、
人前で偉そうにしていた事、
母を苦しめていた事、
そんな表面的な事しか観てない旦那は、
永遠の「息子」なんだな。
父が
「お義父さんに返事を書きなさいよ。」
と言ったけど、
これは、私が電話で報告した事の返事だから。
と、答えた。
短い電話の中で、離婚する事を報告したけど、
義父は電話口では、
「どどちゃん、今までありがとう、
元気でね」
って言ってくれた。
義父は、旦那にとってはダメな親父かもしれないけど、
どどが、旦那の実家で唯一気が合うのが義父だった。
きっと、実家で肩身の狭い思いをしているのでは?
と気にかけてくれたんだと思う。
手紙の消印は、
マンションを追い出される前の日付だったから、
電話をかけた後に、書いて送ってくれた様だった。
しかし、このタイミングで手紙を見せてくる父にも、
ちょっと感動した。
父はいつだって、どどを見守ってくれてた。
これと言って口出しもしなければ、
余計な手出しもしなかった。
これが、大きな愛なんだなと思ったし、
もしも自分が親になったら、
父みたいに子供を愛そうと思った。
最後の場面を目の前にして、
不安が広がる。
土壇場で何かあったら嫌だな。
念には念を押して・・・
もう一通離婚届を区役所で貰い、
全部記入した。
保証人の欄には、私の親と兄弟に書いてもらった。
こちら側2名でも良いのだ。
後は旦那のサインと印鑑だけ。
そんな状態にしておいた。
実家から、千葉までは遠い。
電車で1時間半位はかかりそうだ。
初めて行く場所だし、早めに家を出た。
区役所は、駅から遠く、
駅前から、区役所行きのバスに乗った。
初めて行く区役所は、
都内のものと比べて、敷地も大きく、
利便性が悪いせいか、
大きな駐車場もあった。
自家用車が無いと住めないなと思った。
旦那との結婚生活で、どどが買った車は、
旦那に持って行かれてしまった。
どどは、別に車なんか無くても生活できるし、
市内ならタクシー移動が便利だ。
車を所有するよりも、タクシー利用の方が、
実際にも安上がりなのだ。
生活習慣の違いもあったんだな。
二人の間には、
実は初めから見えない溝があって、
お互い気が付かないように、
何かで埋めて居たけど、
溝はいつしか、
どちらも埋めようとしなくなった。
そして、溝があっても良いとは思えなかった。
どちらのせいという事も無く、
どちらも悪いし、
どちらも悪くない。
ただ、合わないだけ。
それが離婚なのだ。
では、結婚ってなんなのかな?
どどが思う結婚は、自分の家庭を持つ事だった。
家族を増やす事に同意してもらえず、
家族としての思いやりに欠けてる旦那。
結婚しても一人だった。
家族が居ないのに、家庭などあるはずない。
マナトさんは、結婚しようって言ってくれてるけど、
どどは、結婚したいと思わなかった。
結婚してないけど、事実婚の様に、
家族にはなれるし、
家庭が欲しいだけのどどには、
結婚制度の意味が解らない。
こうやって、離婚するのが大変なだけだ。
離婚届を提出するのは、
区役所の中の戸籍課だ。
区役所の中の少し端の方にある窓口に行き、
時計を見たら、
旦那との約束の時間よりも15分ほど早かった。
しかし、必要書類がちゃんと揃ってるのか、
確認して欲しかったので、
窓口の女性に、書類一式を見て貰う事にした。
本当にここまで長かった。
思えば、旦那との結婚届は、
旦那が一人で出しに行ったな。
結婚式をする前に出しに行きたかったのに、
旦那が必要な書類を揃えてこなかったので、
結婚届けが出せなかったのだ。
結婚式が終わってからも、
いつまでも書類を取りに行かず、
暫く、結婚してなかった。
今思えば、あの時、出さずに、
そのまま居れば良かったな。
しかし皮肉なもので、離婚届けは一緒に出しに来ている。
「はい、書類の方の不備はございません。
あとは、ここに旦那様のサインと印鑑ですね。」
「どうもありがとうございました。
もう少ししたら旦那も到着しますので、
記入してもらいますね。」
と、言った所で、旦那が現れた。
なんてタイミングが良いんだろう。
「あ、今ね、書類に不備が無いか、確認して貰ってたの。」
すると、区役所の女性の方が、
「では、こちらにお名前フルネームと印鑑を、
お願いします。」
まさかの援軍がやって来たのだ。
旦那は、土壇場で何かやらかしそうだと思ってた。
しかし、外面だけは良い。
人前で揉めたりするのはみっともないと思ってるはずだ。
第三者から、しかも事務的に促され、
断りようがないはずだ。
「あ、はい。
いや、前貰ってた離婚届持って来たんだけど」
ほらね、ここまで来て、つべこべ言うのが、
旦那クオリティ。
私は、冷たく
「提出した書類で問題無いので、そちらは不要ですから。」
と、言うと、区役所の方も頷いた。
そそくさとサインを入れる旦那を眺めて、
ああ、これで終わった。
もう、二度とこの男とは会いたくない。
と、思った。
「では、こちらはお預かりします。
後日はがきが届きますので、確認してください。」
深々と頭を下げて、その場を離れた。
旦那は、すべて終わったと言うのに、
「本当は、先にこちらの書類にサインを入れて欲しかったんだけど」
と、なんか契約書みたいなものを持ってきた。
甲は乙を・・・
と書かれた書類は、
今後一切金を要求しない事などが書かれていた。
ほんとうにバカなんだな。
お前の金なんか要らない!って言ったよね?
呆れてしまったけど、
普通にサインして、
その書類は折りたたみ、バッグに突っ込んだ。
区役所を一緒に出ると、
旦那が駅まで送ろうか?
と言ってきた。
殺されたら嫌なので、断ろうと思ったけど、
自分の買った車に乗るのは最後だから、
送ってもらう事にした。
マツダのCX-3は、車好きなヒカルのオススメだった。
マツダ独特の走行感は、癖になると言われたが、
私は、あまり好きではなかった。
久しぶりに助手席に乗った。
旦那は、ちょっと正気を取り戻したようだったが、
離婚騒動中に起こった自分の話を始めた。
「離婚と言われて、
夜眠れなくなったんだ。
それで、瀬戸さん(私の友人)のクリニックに行き、
うつ病って言われたんだ。」
「へーそうなんだ。
離婚する前の5年位私はずーっとうつ病だったよ!」
睡眠薬を処方して貰った話は、
瀬戸さんから聞いていたし。
だからなんだ?という位な事でしかなかった。
「睡眠薬を処方して貰ったけど、
そのせいで、朝起きれなくなり、
会社に遅刻したりして大変だったんだよね」
昔、浮気をしたらどうする?
って聞いたら、
会社や家庭に迷惑かけなければ何をしても良い。
って答えた旦那だったが、
そうやって会社に迷惑かけてるのは面白い。
偉そうに振る舞うヤツの言葉は、
こうやって、メッキが剥がれて行くのだ。
メッキが剥げた旦那は、ただの錆びついた金属の塊。
廃材だと思った。
マナトさんは、金とか銀では無くて、
ただの鉄かもしれないけど、
ただの鉄でも、毎日手入れしていれば、
独特な輝きを放つのだ。
「お前は、友達がいっぱい居て良いな。
俺は友達が居ないから、
こういう時に、一緒にゴルフへ行く人も居ない」
確かに単身赴任してからは、
千葉には友人は居ない。
「瀬戸ちゃんや、朝美ちゃんと、連絡とって遊べば?」
瀬戸ちゃんや、朝美ちゃんは、私の友人だけど、
家族ぐるみで良く旅行やゴルフに行っていた。
いつも、ちょっとイヤイヤついて来ていたし、
私が、友達と遊びに行くのをとても嫌がってた癖に。
今はこうやって、友達まで恵んでもらうのか?
「ところで、お父さんは元気?」
手紙の事は話さなかった。
馬鹿息子に、賢くなるチャンスなど与えないのだ。
「ああ、元気にやってるよ。
離婚の事を言ったら、兄貴も親父も口を揃えて、
お前は本当に何もして来なかったんだな!
って言われたよ。」
失笑している場合じゃない。
そういうのを開き直りと言うのではないか?
そんな風に進言してくれる家族が居るのに、
何も学習しない旦那。
「あなたさ、実家に帰っても、
お義兄さんの嫁にお世話になりっぱなしでさ、
あなたは、息子じゃないんだから、
シッカリしなさいよね!」
「そうだね。」
笑いながら頷いてた。
どうせ、解ってない癖に。
「ではお元気で!」
駅前で車から降りると、
それだけ言って別れた。
助手席のドアを閉めると、
振り返りもせずに歩き出した。
数歩歩いたところで、
500円玉を拾った。
ああ、あの貧乏神と別れると、
こうやって、お金が降って来るんだなと、
有難く頂いた。
駅ビルの前を通りかかると、アンケートをしていて、
今なら、500円分のクオカードをお渡ししますとの事。
簡単なアンケートに答えて、
ものの5分で500円を頂いた。
そして、駅の切符売り場で、
釣銭を受け取ったら、
50円多い。
どうやら、前の人が取り忘れて行ったようだ。
それも有難く頂いた。
旦那と別れてすぐに1050円儲かったのだ。
これは、何か金運が上昇するのか?と思った。
実際問題、今の給料で一人暮らしとなると、
わりとキツかった。
金運上がらないと、困るな。
春には程遠い寒い冬の事だった。
どぶ川に飛び込んだどどは、
大きな川に流され、時に激流に飲み込まれた。
そして、ある時は荒野を一人歩いていた。
もうすぐ、桜の咲く並木道を、
マナトさんと一緒に歩けるかも。
そうなったら良いなあ。
荒野だと思ってた世界は、
彩り豊かな、温かい場所だった。
世界がとても明るかった。
昨日とは違う、今日を。
今日とは違う、明日を。
知らない間に未来を思う力が備わっていた。
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みなさん、お疲れ様でした。(笑)
ようやく離婚出来ましたよ。
新シリーズ第三話は、
離婚してから結婚・出産するまでの話です。
お楽しみに!(笑)

レッドカーペットを歩く朝夏様。
トムクルーズに、
「ヒロインになれば?」と言われてたねえ。
ほんと、朝夏様は輸出したくないので、
よろしくお願いしますよ。
マナトさんと朝夏まなと様は無関係です。
(指さし確認OK)
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