どどさんが、365日中300日程、
居酒屋に通っていた頃の思い出深い話シリーズ。
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その日は、なぜだか少人数の飲み会だった。
しかも、もう1人は残業で遅れていた。
そう、目の前に居るのはミツルだ。

ミツルは、アクの強い男だが、
悪いヤツでは無いし、
ちょっと酒癖悪い所がダメだと思うけど、
同じ年だという事もあって、
良い飲み友達だった。
しかし、職場の玄関前で待ち合わせして、
居酒屋に行ってるのに、
噂にもならないのが、
非常に悲しい所。
どどさん、昔からそんなキャラだね。
その日も、職場から歩いて行ける居酒屋で、
飲み始めたところだった。
どういう話の流れか解らないけど、
いつもはバカな話しかしないのに、
その日に限って真面目に、
結婚について語り合っていた。
どどさんはその時、遠距離恋愛している彼氏が居て、
いつか結婚するんだろうな。
と、思っていた。
対するミツルは、彼女も居なくて、
ただの酒飲みな女、どどさんの飲み相手ばかりしている。
そんなミツルに、いい加減結婚とか考えた方が良いよ。
なんて、説教してみたり。
今、思うと、結婚しても離婚しちゃって、
デキ再婚しちゃうなんて思ってなかったから、
偉そうに言ってたものだ。
ミツルは、急に真面目な顔をして、
「俺、この話誰にもしてないんだけど、
まあ、別に秘密って訳でも無いんだけど・・・」
いつもふざけてるミツルなので、
何しゃべりだすんだ?と、一瞬身構えた。
「実は、俺の家系、呪われてるんだ」
背中がゾクッとした。
「ねえ、今、マジで背中がゾクっとしたよ。」
「じゃあ、やっぱり本当なんだろうね。」
ミツルは、ちょっと残念そうな顔をした。
呪いの正体とは、
ミツルの実家は、地方の豪農だった。
小作人の方達は、
近年、ミツルの実家が所有する土地に建てた家に住んでいた。
所謂、借家だ。
借家なので、普通に家賃を毎月頂いてるわけだ。
その、元(もと)と言った方が良いと思うが、
元小作人の家族の方が、
旦那様が急死して、収入が途絶え、
家賃を滞納してしまったのだ。
以前は豪農だったとはいえ、
今では、ただの大家さんをしているミツルの実家としては、
家賃収入が途絶えるのは困るので、
出て行ってもらう事になったのだ。
お子さんを抱え、大変なのは承知の上だが、
なんせ、ミツルの実家も不動産業という商売をしている訳なので、
苦渋の決断だったそうだ。
それは、不動産の賃貸契約に基づいたもので、
ミツルの家には一切問題が無く、
仕方のない事だったのだが、
その追い出されることになった奥様が、
捨て台詞で吐いたのが、
「末代まで呪ってやる!」
だったのだ。
ミツルの話によると、
ミツルの実家は、そもそも本家では無かったのだが、
父方の兄達が、次々病に倒れ、
ミツルの父に本家の土地を守る役目が回ってきたというのだ。
しかも、ミツルには、兄と姉が居るにも関わらず、
兄は、定職につかず、
姉は、縁談が次々壊れる女なのだ。
ミツルは呪いの事は信じて無かったのだが、
姉の縁談が、次々壊れるのを目の当たりにして、
流石に信じようと思ったそうだ。
本当だとしたら、凄い威力のある呪いだと思った。
ミツルは、淡々と自分の実家に降りかかった不幸の数々を、
話して居た。
そんな時、どどさんは思い出したのだ。
自分には除霊?魔除け?厄除け?的な力がある事を。
「ねえ、私、以前こんな事があったんだけど・・・」
それは、高校時代の事、
母の実家に行ったら、
親戚の子が学校の前でダンプカーに轢かれて、
重症だと言うので、
見舞いに行ったのだ。
意識不明になって既に2週間程だという。
その病室に入った時に、
何か、物凄い重たい空気を感じたので、
思わず念じたのが、
「ここから去りなさい」
そして、最近お亡くなりになったという、
その子の祖母に線香をあげる為に、
その子の家にも行ったのだが、
そこも、病室同様、
いや、病室以上に重苦しい空気に満ちていた。
そこでも、思わず念じてしまったのだ。
「もう、ここから出て行きなさい」
ほんと、自分でもなんのこっちゃか?
という気持ちになったんだけど、
それで、意識不明だった子は何の障害も無く、
普通の暮らしをしてるんだから、
ちょっと、良い事したかな?
と、思いましたよ。
「まあ、そんな事があったので、
ミツルも、この機会に私に話して、
多分、何か変わると思うよ。
呪いも、もう消えてると思うし。」
するとミツルは、
「そうなんだよ。
呪いはもう消えてると思うんだ。
風の便りに聞いたんだけど、
その呪いをかけた人ね、
その後、割とすぐに病気になって、
お亡くなりになってるんだ。」
呪いをかけた人物が亡くなってるなら、
もう、呪いは解けたのだろうか?
いや、呪いだけ残るという事もあるのかな?
「でな、うちの母親も言ってたけど、
呪いは、かけた方にも呪いが回るんだよ。
だから、人を呪ってはダメなんだよ。」
ミツル、時々良い事言う。
そうだな、確かに。
そんな話をしたミツルは、
何度も言う様だが、
未だに独身だ。
頑張れミツル。
呪いは解けてる。
問題は、お前自身だ。
まだチャンスはあるはずだ。(笑)
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