どど飲み話3 ヒカルと7人の女達

その日は、アリサとサシ飲みの日だった。

アリサは他部署で働く友人で、

一番の飲み仲間だ。

 

二人でお気に入りの居酒屋に出かけ、

ガツガツ食べて、ガツガツ飲むという。

いつもの体育会系な飲み会は、

気兼ねしない関係が、お互い居心地が良くて、

定期的にサシ飲みに出かけていた。

 

 

いつも通り、アホみたいな話しかしないのだが、

その日の話題は、ヒカルについてだった。

 

ヒカルは、総務課の課長で独身。

割と女性が多い職場では、人気がある男だった。

しかし、総務という立場なせいか、

他部署の人と話す機会も多く、

色んな部署に女を作る、

駄目な男でもあった。

 

しかし、憎めない魅力を持ってるヒカルは、

とにかくモテるのだ。

 

「ねえ、ヒカルの新しい女って知ってる?」

 

アリサもどどさん同様、

様々な飲み会に参加しているため、

行った先々で、色んな情報を耳にしていた。

アリサとの飲み会は、

所謂、情報交換の場であった。

 

ヒカルの新しい女。どれが新しくて古いのか、

時系列で整理しないとな。

なんて、笑い話が出る位、

ヒカルの女関係は混沌としていた。

 

本命の彼女は、どうやら職場には居ない様だけど、

職場の食い散らかし方が凄い(笑)

 

アリサと答え合わせを始めたどどさんだった。

 

「まず、営業のアオイさんでしょ、

んで、休日映画館で目撃したセイコ。

この前、旅行に行った時にカミングアウトしちゃったスミレ。」

 

「スミレは衝撃だったね。

旅行に遅れて合流するから、

二人で車で来るついでに、

ラブホに寄って来たとかさ。

あれは、面白かったね(笑)」

 

「んで、もう終わったかも知れないけど、

アユミも確実だよね。」

 

「なんせ、ヒカルの他の女の話をした時の、

豹変っぷりが。

あの人、自分が本命だと思ってたよね。」

 

「あーあと定番のあの人忘れちゃだめだよ。

クミさん!

あの人は、完全に古女房化してないか?

ヒカルの噂話とかも、普通に笑顔で聞いてたもん。」

 

「ねえ、それって自分だけ騙されて無いと思ってるんじゃない?」

 

「え・・・だとしたら怖いね。

一番ヤバい人じゃない?」

 

「で、そろそろ教えてよ。新しい女って誰よ?」

 

「意外・・・かもよ(笑) 3階のパートさんのユキちゃん」

 

「げーーーーー。あんな若い子まで手籠めにするのか?」

 

「ヒカル凄いねえ(笑)」

 

「なんで、モテるのか訳わからん。」

 

「ハゲは絶倫だからじゃない?」

 

そう、ヒカルはハゲなのだ。

ハゲでもモテてる、すごい人だ。

 

「ねえ、アリサ、ユキちゃんにはびっくりなんだけど、

この話知らなかったっけ?」

 

それは、先日退職したリリカのことだ。

リリカは、ちょっとかわいくて、男性に人気のある女だったが、

ある飲み会で、ヒカルに持ち帰りされたのだ。

それとは関係なく、別の会社に移るとかで退職したのだけど。

 

「マジかよ?」

「マジだよ。」

 

「とりあえず飲むか?

生ビールお代わりお願いします。」

 

酒飲みの特徴の一つは、

何かと飲む口実を作ることで、

何があっても、まあ飲むか!

って話を変えたり出来ることである。

 

アリサが急に冷静になって、

指折り数え始めた。

 

「アオイ、セイコ、スミレ、アユミ、クミ、ユキ、リリカ」

 

「7人か!」

 

「ヒカルと7人の女ってことか。」

 

白雪姫と7人の小人達?

的な楽しさを感じつつ、

アリサと笑わずにはいられなかった。

 

なぜ、同じ職場で食い散らかすのか?

なぜ、他にも色々と噂を流しておきながら、

新規が増えるのか?

 

ヒカル凄いな!

としか言いようの無い現象だ。

 

しかし、喰った女の数だけ酒が進むのが、

有難い。

 

アリサは、同じペースで飲めるから楽しいのだが、

どちらも止めようって言わないから、

ついつい飲みすぎる。

 

まあ、そこが好きなところだけど。

 

こんなに噂されてて、今頃ヒカルは、

どこかでクシャミしてるよね。

 

「ねえ、でもさヒカルも、もう40だし、

そろそろ結婚とか考えてるんじゃない?」

 

「なんかさ、

彼氏にするには良いかもしれないけど、

旦那にするのは嫌だよね!」

 

「浮気って病気だからさ」

 

そんなアリサは、長年付き合ってる彼氏が居る。

 

どどさんにも彼氏が居る。

 

でも、ぶっちゃけ、結婚よりも、

こうやってアリサと飲んでるのが、

楽しかった。

 

こんな日々が続けば良かったのだが、

お互いその時付き合ってた彼氏と結婚して、

お互い少しずつ苦労する事になるのだ。

アリサは離婚してないけど(笑)

 

ヒカルと7人の女達は、

少しずつメンバーチェンジや、

メンバー脱退を繰り返し、

日々更新されて行っていた。

 

そんなヒカルだったが、

やはり職場の玄関で待ち合わせして、

2人で飲みに出かけても、

全く噂にならない、どどさんだった。

 

会社の内線電話で、飲みに誘われる。

 

「今日、行くか?」

 

「おう!行こうぜ!」

 

ただの飲み友達だ(笑)

 

しかし、ヒカルの誘いは、

メンバー全員に断られた後にかかって来る理由なので、

ああ、今日はメンバーさん忙しいのか!

って、軽く吹き出すのを堪えつつの、

「おう!行こうぜ!」

なのだ(笑)

 

そんな時のヒカルは、

ちょっと寂しそうなのが、

割と頭に来る感じだった。

 

失礼な男だ!

 

「今日は奢れよ!!」

 

「そんな事言うの、お前だけだぞ!」

 

そりゃそうだ!

メンバーさんは、奢られるのが当たり前だもんな!

 

そんなヒカルは、そこから約10年後の50歳手前で、元メンバーさんと結婚した。

 

前出の7人の中には、勿論居ない、

後期メンバーさんだった事を、

ここに報告致します。(笑)

 

 

 

 

 

 

 

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