お別れの記念は、爬虫類と宝石と

ヅカ日記

「黒蜥蜴」を見てきました。

『黒蜥蜴』特設ページ 梅田芸術劇場
美貌の女盗賊“黒蜥蜴”が繰り広げる耽美と闇の世界。江戸川乱歩の傑作を三島由紀夫が戯曲化した究極のエンターテイメント!東京・日生劇場2018年1月9日~1月28日 大阪・梅田芸術劇場メインホール2月1日~2月5日

 

三島文学の香りが立ち込める濃密な舞台に立つ、

中谷美紀さんの黒蜥蜴が、

美の極致だったわ。

 

もう、中谷美紀さんが黒蜥蜴をしたことで、

90%完成したとさえ思う、

素晴らしさ。

 

脇を締める役者さんの確かな技術力も素晴らしかった。

 

特に成河さんね。

あの人の怪演っぷりは、ゾクゾクくるわね。

 

そんな素晴らしい舞台、

宝石のごとく輝く役者さんたち、

黒蜥蜴様が、次々と「爬虫類の称号」を与えていく。

 

そんな中、私は「井上芳雄」とお別れをした。

 

私が井上芳雄さんと出会ったのは、

2010年の「モーツァルト!」でした。

 

劇団四季しか見たことのなかった私が、

あまりの評判の良さに、チケットを手に入れて見に行ったのです。

 

2階席後方から見たその舞台は、

恐ろしく素晴らしかった。

 

梅芸のホール空間全体に、歌声が音符になって、

埋め尽くされていくのだ。

 

井上芳雄さんの歌声があまりに素晴らしく、

異常に感動した私は、

すっかり魅了され、

ファンになった。

 

芳雄さんの舞台は必ず見ていたと思う。

 

一番好きだったのは

「ダディロングレッグズ」

 

子供の頃、本や漫画くらいしか娯楽のなかったどどさん。

なんども同じ本を読んだので、

記憶の書き込みの深さが違う。

 

ジルーシャが割と平凡な容姿だし、

孤児だし、

でも、まさかのお金持ちのおぼっちゃまと結婚しちゃうのが、

シンデレラストーリーだと思って、

とても憧れたのだ。

 

「ダディロングレッグズ」を初めて見た時は、

夏の夕暮れ、

実家の二階の和室にある板の間で、

辺りが暗くなるまで読んでいた、

そんな日の記憶が蘇り、

意味もなく泣いた。

 

あの頃の自分は、守られていた。

父も生きていた。

 

なんで、今、私は大阪で家庭を作っていのだろう。

板の間から突然ワープして、

劇場の客席に座っている。

そんな錯覚さえ起きたものだ。

 

いや、それくらい、

「足長おじさん」を読み込んだ私が見ても、

原作の雰囲気そのままの世界が広がっていたのだ。

 

芳雄さんは、足長おじさんのイメージそのものだった。

おじさんになりきらず、

だからと言って、青年ではない。

そんな、過渡期の男が、

少女から女に孵化しようとしている孤児のジルーシャと、

恋をするのだ。

 

足長おじさんは、あまりに有名な話なので、

説明はしないけど、

ジルーシャから送られてくる手紙を、

一喜一憂しながら読むところや、

読み終わった手紙を、

自分の書斎に画鋲でどんどん止めていき、

空虚だったジャーヴィー坊ちゃんの心が、

満たされて行くのが可視化されていて、

非常に高価的な演出だと思った。

 

ジャーヴィー坊ちゃんの芳雄さんは、

あの時(初演)これ以上ないタイミングで演じたのだと思う。

 

そして季節は何度か変わり、

「モーツァルト!」や「ダディロングレッグズ」の再演。

 

二度目に見た感動は、

一度目の感動にさらに積もるような場合もあれば、

一度目の感動を溶かしてしまうこともある。

再演物につきまとうリスクなのかもしれない。

 

一部、積り

一部が溶けた。

 

そんな印象ではあったものの、

「井上芳雄」への印象は全く変わらなかった。

 

暫く、夢の世界タカラヅカの住民として、

朝夏まなと様を中心に、

美人を眺める生活を続けたせいなのか?

特殊なフィルターがかかった世界(スミレコード)が、

心地よく思えてきたせいなのか?

 

ヅカ以外の舞台を観に行く機会がめっきり減った事も、

ひとつの要因なのかもしれない。

 

黒蜥蜴の舞台に立つ「井上芳雄」は、

ハッキリ言って残念以外のなにものでも無かった。

 

そんな印象を持った事に、

自分でも驚いてしまい、

暫く自問自答していたのだが、

 

ひとつの答えに辿り着いた。

 

「井上芳雄」には色気が皆無なのだ。

 

いや、歌声には色気があるのだが、

本人には無いのだ。

 

黒蜥蜴はストレートプレイと言われる、

歌の無い芝居。

 

超絶色気を必要とする役どころは、

「エリザベート」のトート役もそうなのだが、

あちらは、ほぼ歌。

完全なるミュージカルである。

必要な色気の情報は、主に歌声で補填されていた。

 

色気のある歌声の枠を「声」にまで広げたところで、

色気の無さは、話し方にも関係するので、

今回は、何の補填も無かったとしか、

言い様が無い。

 

黒蜥蜴を演じる、中谷美紀さんが、

圧倒的な色気で舞台を席捲しているのだ。

 

黒蜥蜴と対峙する明智君は?

何の色気も無い男なのだ。

 

残念だった。

 

では、代わりに誰がやれば良かったのか?

 

個人的には、コニタン(小西遼生)を推すけど。

もう、誰でも良い。

芳雄の代わりに色気だけある人を連れて来てほしい。

 

そんな気分になった。

 

まあ、ここまで熱く語ってきて、

あれだけど・・・・・

 

私は「井上芳雄」とお別れすると言っても、

完全にファンを辞めるわけではない。

 

「井上芳雄」にも死角はあった事に気が付き、

神と崇めていた、

ミュージカル界のプリンスである「井上芳雄」とは、

決別したのだ。

 

数年前の私だったら、

それでも神だと崇めていたかもしれない。

 

様々な舞台(主にタカラヅカ)を観て、

色んな役者を観て来た(主に朝夏まなと様)。

 

役者にとって何が大切か?

自分なりの答えが見つかっていたのだ。

 

そう、私にとって一番大切なのは、

ビジュアルと色気。

実は、技術では無かったという事に。

 

どどさんがヅカに向いてる理由が

そこに、確かにあるのだ。

 

週末は月組公演を見てきます。

楽しみ。

 

 

 

 

 

 

 

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